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2020年1月24日金曜日

第11話「私は突然」

私は「突然」である。私突然は何の前ぶれもなく、いきなり襲いかかったり、出会ったり、起き上がることを得意技とする。例えば今大相撲で、突然現象が起き上がっている。幕内17枚目どんじりにいる「徳勝龍」がな、なんと今日を終って12勝1敗となり優勝争いの筆頭に立った。同じ幕内の4枚目の「正代」が12勝1敗で同じく優勝争いの筆頭に立った。突然二人は強くなったと言ってもいい。徳勝龍は幕内と十両を行ったり来たりしていた。正代はきっと強くなるとの期待をずっと裏切って来た。が、人間一生懸命やっていると、突然ごほうびをもらえる現象が起きる。プロレス技のようなエルボーバンチと、張り手が横綱らしくないと叩かれて、やる気を失った「白鵬」は初日勝った後2連敗で、もうやだと休場、もう一人の横綱鶴竜は、初日から敗け、2日目勝ってから2連敗でもうだめと休場。大関豪栄道はカド番脱出が得意だったが、ついに8敗大関陥落となった。もし大関「貴景勝」が怪我でもして休場したら、最高位は関脇となる大珍事だ。大相撲の神様はこりゃヤバイと思ったのだろう。番付表を見て目をつぶり二ヶ所を指した。そこが徳勝龍と正代であった。二人共真面目で心やさしい。幕内どんじりというのがよかった。私突然は、大相撲の神さまから命令を受けたのだ。不思議なもので突然現象が体に乗り移った二人の力士は、日毎に強そうに見えて来るではないか。勝っている本人たちも、最初はなんで勝ったのか、みたいだったが、かなりというか、そこそこ自信満々になって来ちゃった。但し突然現象には厄介なものが襲いかかる。もしかして優勝か、ひょっとして優勝できんのか、これを考え出したと同時に猛烈なストレスが襲う。体はでかくても心臓がでかい訳ではない。胸はドキドキ、バクバクしはじめる。そして眠れなくなる、目の前に優勝の2文字がキラキラと輝くのだ。私突然は実にそれを楽しむのだ。だが優勝は一人だけだが、二人で優勝をと考える。そしてこんなイタズラを考える。正代と徳勝龍がバーンと立ち上がって、がっぷり四つに組んで、土俵中央で二人が突然デープキッスをする。行事が分けて入っても二人は恋人同士のように、キッスしたまま離れない。だって離れたらどっちかが勝って、どっちかが負けるから。この突然現象にNHKは大慌てとなり、緊急会議を招集、キッスの部分にモザイクを入れようとなった時は、すでに放送時間が終了してニュースが始まる。私突然は徳勝龍と正代の二人に優勝させたいのだ。待てよ、大関貴景勝が2敗でぴったしくっついている。さて、どんな突然を用意しようか、突然ストレスが襲ってきた、今夜はきっと眠れない。春には珍事が起きる。
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