犯罪なんだよ、これはやってはいけない事なの、判ってる?警察に捕まるんだよ。
すみません、すみません、もう二度といたしません。
とあるコンビニ売り場の裏の狭い事務所。店主は四十五、六歳、そこにパトカーで来た若いお巡りさん二人。机の上には丸美屋のふりかけ二種、ゆかりちゃんとのり玉子、それと紫色のグミ一袋と森永キャラメル一個、以上213円。手に一万円札を握って首を項垂れているのは八十六歳の老婆。
何でおばあちゃんお金持っているのに万引きしたの?ドロボーなんだよ。
すみません、つい孫の孫にあげたいと思って、すみません、許してください、お金はお支払いしますから。
初めてなのおばあちゃん、ハイ初めてです、すみませんを連発しながらおばあちゃんはパトカーに乗せられて行きました。お巡りさんうちは被害届は出しませんから宜しく頼みますと。
ドカーン、ガチャーン、バカアーンとあるコンビニに一台の小型ライトバンが突入しました。まさか車のままご来店ではありませんから店員はいらっしゃいませなんて決していいません。ギャーと叫んでぶっ飛びました。運転していたのは七十八歳の老人です。
ブレーキとアクセルを踏み間違えたのです。駐車場に入れる手順を間違ってしまい、車ごとお店に入ってしまったのです。
マイッタなあ、マイッタなあと店主はパニックです。小学生二人がじゃがりことガリガリ君を手にし口にしていました。頭をぼりぼりかきながらすみません、えらい事しました、すみません、いや〜えらい事してしまった。この店は以前にもイノシシみたいな黒バイクに突入された事もあるとこの事だった。
とあるコンビニの昼下がり、どうしたんですか、どうしたんですかと若い女性店員の声、店主が来てどうしたんだ、おじいさんがトイレに入ってもう一時間以上出て来ないんで、他のお客さんが困っているんです。ドンドンドンおじいさん生きているんだったら開けて、ドンドン生きてるんですかおじいさん、どうしたんですか、ドンドン、よし合い鍵で開けよう。ウァーなんだいこりゃーと店主、驚く。
トイレの中は居酒屋状態だった。ワンカップ大関一本、宝焼酎の缶、第三のビール二缶、赤貝の缶詰一個、フグの一夜干一袋。おじいさん八十二歳、便器にぐったり座り込んでグーグー眠っている。とんでもなく気持ちよさそうだ。いくら揺さぶっても起きないのである。
おばあちゃんいつまで週刊誌読んでるの、もう二時間近くだよ。
いけないのかい、いけない訳じゃ無いですけど。じゃあいいじゃないの、アタシャ死ぬまでヒマでヒマで仕方ないんダヨ、こうやってコンビニを巡って死ぬのを待っているのヨ、家帰ってみたって誰もいないんだからグダグダ言わないでよ、今いいとこ読んでんだからとすこぶる官能的な週刊誌を学生や会社員、ガテン系の兄さんと一緒に読書を続けたのです。
全く何も買わないでずっといるんだからトイレも使うし、何とか考えないといけないな。あのおばあちゃん昔はこの近所の小学校の校長先生だったんだよ。
お客さんなんか教え子が多いからここへ来ると楽しくてしょうがないんだ、確かもうすぐ九十歳に近いはずだよ。そういう中年店長も教え子の端くれであった。全然頭が上がらないのである。
ある事を調べたくて近所のコンビニを自転車でクルージング、どこへ行っても事実は小説より奇なりで切ない話、恐い話、気持ち悪い話、教えられる話が続々と聞ける、見れる。
コンビニエンスとは便利という意味。24時間開けっ放し。殺人から人助けまで便利の時間の中に詰まっている。
売り上げの50%位はフランチャイズの本部に吸い取られる。
その大ボスの鈴木敏文という経営者の新刊本を意地でも売らないんだというセブンイレブンの店長がいた。何故かと聞けば、こいつの本売ったってみんなこいつのフトコロに入ってしまう、書いてある内容もいつも同じなんだよ。相当遅れているよこのオッサンはと云う。現在本部と裁判中だという。上納金が酷く多過ぎるからだと。
あっ中学生みたいのが学生服の中に何か入れた。
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