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2016年6月27日月曜日

「日曜日、渚にて」



昨日午後四時三十七分二十八秒、家の側の海岸に着いて時計を見る。
日経新聞と日刊スポーツ、キリンの缶ビールを持っていた。
硬式少年野球に入団する子が少ないので応募チラシを近所のセブン-イレブンの店長に、どこか目立つところに貼ってと頼んだ後だった。
缶ビールは一番搾りだった。

海から潮の香りをのせた風がザワザワと吹いていた。
海は茶褐色に濁って不規則だった。
乱れた波が立ちサーファーがたくさんいた。
やせてミイラみたいな色になっている地元の女性サーファー、たっぷり太った中年のサーファー、うらやましいほど若々しいサーファーたち。

海岸とその脇のサイクリングロードをつなぐ七段の石の階段によっこらしょっと腰をかけた。砂防柵前の草の上にパラソルを広げてパイプ椅子に座って語らう二人の男女、後姿で顔は見えない。
私のすぐ斜め前には白いビニールシートを敷いた上に若い男女、男はサーファー、女性は白いシースルーのロングシャツの下にオレンジ色のノースリーブ、足は大きなスポーツタオルで隠していた。後姿でやはり顔は見えない。
小さなアイスボックスからキリンラガービールとアサヒスーパードライの缶ビールを出した。男がスーパードライを飲み、女性がラガービールを飲んだ。
スーパードライとラガービールはライバルであった。

キリンビールには、ひとかたならぬ愛着があるので、ラガービールを飲んでくれているのがうれしかった。特にラガーを飲んでくれている女性がうれしかった。
いっそ近寄って行ってアリガトサンと言おうと思ったがやめて、私は一番搾りをゴクッと飲み日経新聞を広げた。風でバタバタしたので小さく畳んだ。

茶褐色の海から一人二人とボードを持ったサーファーが海から上がって来た。
ビートたけしの監督した無言のサーファーの映画を思い出した。
「あの夏いちばん静かな海」確かこんな題名で、マイク真木の息子、真木蔵人が主役をしていた。この映画でビートたけしがピュアな心の持ち主であることを知った。
若いボクサーの青春を題材にした「キッズ・リターン」という映画が大好きであった。
このに作品にはビートたけしの根っこが色濃く出ている。
売れない画家夫婦を題材にした「アキレスと亀」もよかった。

新聞各紙は英国のEU離脱の記事一色であった。
大騒ぎした都知事問題はどこかへ消えていた。参議院選挙の記事は決して大きくはない。もうすでに自民党と公明党の大勝を報じている。
世界的貧富の格差の拡大は民衆が国家主義的になる。
世界史的に見てローマ帝国の子分だった、大英帝国ほどの悪はない。

ロンドン塔とは血の塔であった。次にスペイン、フランス。
弱小国を占領しては植民地化し奴隷の売り買いを莫大な資産とした。
日本の戦国時代も最大の戦利品は婦女子をはじめとする人身売買であった。
義の人といわれた上杉謙信も、人は城といった武田信玄も、人身売買の市場を開いていた。当然戦国大名は等しく同じで戦利品の人間(労働力とお産力)はアジア諸国に売られた。それを奪っていったのが当時の大国であった。
大英帝国とは大海賊国家であった。新聞を読みながらそんなこんなを考えた。
戦国時代だけで10万人位の人間が売り飛ばされたと記録が残っている。
日本国は国ごとアメリカの奴隷として買われてしまった。

目黒の池にバラバラの死体が見つかった。
前日「前略、殺人者たち」を読んでいたので、人間という生き物が残酷を極める所業をすることを知っていた。「凶悪」という映画で、殺人犯が風呂場でゴム長靴を履き、血の海の中でバラバラにするシーンを思い出した。
埼玉県熊谷で起きた事件をモデルにしていた。熊谷では何故か残酷な事件が起きる。
暑さのせいだろうか(?)

パドリングをしながら波を切る若者、見事波に乗る若者。
新富町にある“寿し辰”という店の主を思い出した。
末は千葉県九十九里浜に行ってサーフィンを楽しんでいるという。
この店の1500円の目にも美しいちらし寿司を超える店はないだろう。
時計を見ると午後五時二十二分三十一秒、私は海を後にした。

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