5月7日(火)、東海道線の終電に品川駅から乗った。10連休明けで混んでいると思ったが意外にもすいていた。4人掛けに私ひとり。隣を見ると27、8歳の女性が完全に熟睡していた。窓際に第三のビール、本麒麟の赤い缶が置いてあった。友人の小説家と一日一回しか上映しないドキュメンタリー映画を渋谷で観た。品川まで一緒に行き駅で、「そんじゃ、また明日よろしく」と言って別れた。キップを買って改札口に向かうと、旧知の友人が「オー、オー、オー、久しぶり」と言って近づいて来た。「オー、オー、オー、何やってんだよ」と言った。「年金暮らしだよ」と言った。終電まで1時間ほどあったので、ちょっと一杯飲むかと、駅の脇にある大衆食堂みたいのに入った。かつてCM界のヒットメーカーだった共通の友人、故市川準さんの思い出話となった。あの人は、はにかみ屋であった。世田谷に立派なコンクリートの邸宅を建て、その前で子どもと記念写真を撮り、写真ハガキを送って来た。一行独特のふんわりした文字で「ボクには似合いませんよね」と書いてあった。何しろ売れに売れ、ほとんどをヒットさせた。年金暮らしの元演出家は「今、オレは年金暮らしで何も仕事をしていないんだ。ずーっと連休、ずーっと毎日が日曜日、家にずーっと居ると女房の目が恐いんだよ。市川準さんの『亭主元気で留守がいい』女房の目にそう書いてあるんだ。だから毎日、『ぶらり途中下車の旅』をやっているんだ。今夜はその仲間と京急巡りをしていたんだ。一日は長いね。仕事をやっているときは、あっと言う間の一日が、何しろ長いんだ」。ふたりでフライドポテトとチーズを食べた。CMの世界はどんな売れっ子も、死んだりしたら48時間でほぼ忘れられる。「オッもうすぐ終電だ。また会おう。メールは?」と言うから「全然できない。携帯に電話をくれ」と言った。ある説によると、夫が毎日家でゴロゴロし、シャワーも浴びず、髪も整えず、パジャマのままでオナラしながら新聞を読み、テレビのバラエティを見ていると、99.9%の女性は一度は夢の離婚を考えるらしい。午前1時半頃家に着きテレビをつけ、服を脱いでいると、夢の離婚(?)をずっと考えているヒトが階段から降りて来た。「結婚へは歩け。離婚へは走れ」という格言がある。夫はつらいよなのだ。友人と観た映画は『チカーノになった日本人』。いずれとんでもない人生の姿の詳細を書く。
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