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2020年4月7日火曜日

第46話「私は奴隷」

私は「奴隷」である。私と同じ現代人も奴隷である。100年に一度といわれる新型コロナウイルスの襲来。つい四ヶ月程前の正月、私奴隷は箱根駅伝に声援を送っていた。今私奴隷は家から出ること慎しんでいる。3日間が経ち私奴隷は考えた。私奴隷も現代人も「自由の奴隷」になっていると。文明の進化、SNS全盛、人工知能Alの台頭、人間は目に見えない電波によって、あらゆる自由と便利を手にした。スマホ一台あれば何でもできる自由。PC一台あれば自由は知らなくていいことまで知る自由。老人も大人も、三つ四つの子どももスマホやPCを使いこなせる。自由と便利はさらに5G、6Gと進む中で、実は私奴隷も現代人も、自由の奴隷になっていた。バーチャルな時間、スキャンダラスなニュース、フェイクニュース、エログロナンセンス。ワンタッチとか、マウスの動きが生む快楽という自由の奴隷である。私奴隷たちは自由を手にして、実に不自由になった。どこで、誰と、何をし何をどう食べたかが、瞬時に分かってしまう。知られたくない家族や一族の過去や秘密。知りたくもない他人の家族や、その一族の過去の秘密も目の前にある。自由の奴隷になった人類より、アマゾンの原住民「ヤノマミ」の方が、自由に見える。文明を拒否しているからだ。私奴隷はそう思った。一日中金もうけの話をする金の奴隷。権力争いをする、権力の奴隷、異性を追いつづける、性の奴隷、何でもかんでも知りたがる、情報の奴隷。自由と便利の奴隷が、私奴隷であり(スマホもPCも使えないが、人を介して使っているのと同じ)現代人といえる。小学生が将来何になりたいか、とのアンケートの第一位が、ユーチューバーであるという調査があった。新型コロナウイルスは、あらゆる自由と便利を手にした現代人に、世界中マスク不足という問題をつきつけた。権力者も大会社のオーナーも、人気者のスーパースターも、巨万の富を手にした者も、ギブミーマスクなのだ。文明の進化の先きにあったのがマスク不足なのだ。100年に一度の混乱と混沌から、私奴隷は忘れてしまった大切なものを、思い出さねばならないと思った。敬愛する天才中野裕之監督の「ピース・ニッポン PEACE NIPPON」が、ネットフリックスで見られるようになった。天才が電話で教えてくれた。超絶的美しさのニッポンの風景を、そこに行かずに見れる、矛盾するが、自由と便利の恩恵に私奴隷は見とれた。(何度見てもニッポンは美しい)小泉今日子さんと東出昌大さんのナレーションもいい。タイトルデザインは、天才葛西薫さんだ。ぜひ見てほしい。主題歌に涙するはずだ。現在四月七日午前六時二十九分四十三秒。英国のジョンソン首相が病状悪化ICUに入ったとニュースが報じている。おそらくアウトになるだろう。ノドに魚の太い骨が、突き刺さったような激痛がずっとつづき、睡眠導入剤も効かず眠れなかったと、ICUから生存した人の話が新聞に載っていた。私奴隷はこれからアチコチに露出する。倒産、破産、夜逃げ、廃業、閉店、解散、縮小リストラなど見たくなく、聞きたくない話に、直面して行くことになる。サバイバルをかける私奴隷に解放はない。したたかな投資家は、人の不幸、世の不幸も、ここがチャンスとばかりに、株を買ったり売ったりしている。NYダウは1600ドル以上も値上りしている。正にハゲタカだ。日本のハゲタカも色メキ立つことだろう。お医者さんや看護師さんが、次々と死んでしまうウイルスで金もうけ、その先は地獄だ。やっぱりピース・ニッポンの映像を見て、天国気分となり少し眠りたい。私奴隷は眠りの奴隷でもある。オヤスミとオハヨーが共にある。大英帝国の首相がもしコロナウイルスで死んだら、その次は、そしてその次は……。目に見えない電波、目に見えないウイルス菌に世界は自由を奪われている。


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