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2014年10月3日金曜日

「静岡県民」



ハンドルを持つ運転手さんの手が震えていた。
声も震えていた。

運転手さん大丈夫、かなりブルブルしているけど。
赤坂五丁目交番まで行ってよといったら、スミマセンまだ東京のこと知らないんです、お世話になりますがお教え下さいといった。
なんでそんなに震えてるの?危ないじゃないといった。

チェッカー無線というタクシー会社の運転手さんに何をやっていたのと聞いたら、静岡県静岡市で歯科医をやっていたという。腱鞘炎になり歯科医を辞めたとか。
それに静岡市も人口減少が激しく歯科医院はみんな苦しいんだともいった。
むかしは銀行が融資をしてくれたが、この頃歯科医院は構造的不況業種で余程の担保がないと融資が受けられないらしい。
全国にコンビニが46000店位で歯科医院は65000院位、勝ち組はほんのわずかですよといった。それにわたくしみたいな見栄えの悪いオヤジのところにはお客さん?が来てくれないんです。静岡市ではやっていけないので東京でタクシー会社に入ったんですよ。

へえーそうなんだ、オレの知っている若い先生は虎ノ門ヒルズにどえらい歯科医院をこの間オープンしたよといったら、その人は特別ですよといった。

銀座から乗りそんな会話をして目的地に着いた。
お客さま道をお教えくださってありがとうございましたといいながらサイドブレーキに手をやった。ブルブル震えていた。人相の悪い私のことが怖かったのかもしれない。
領収証はおいりでしょうかと妙な敬語ばかりだった。

歯医者さんが苦しいなんて銀行が金出さないなんて、時代は変わったもんだ。
ちなみに柳田国男の人国記によると、静岡県人は日本一欲がない県民なんだそうだ。
それ故清水次郎長以外あまり有名な人はいないという。
まい日美しい富士山を見て、美味しいお茶をのんでいるとそうなるのかも知れない。

昨日の朝10時頃のことだった。運転手さんがどうか事故を起こさないことを。
何しろブルブルだったから。

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