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2014年10月30日木曜日

「ドキュメンタリーな深夜」




タクシーの運転手さんがお客さんと話してはならないことがある。
それは政治と野球の話だと知り合いの運転手さんから聞いた。
お客さんがどの政党を支持しているか分からない。
お客さんがどの野球チームを応援しているか分からないからだ。

さて、私の知り合いの運転手さんは大の巨人ファンであり、すこぶる話好きだ。 
30日午前一時過ぎ、どうしても見たい映画があり茅ヶ崎のTSUTAYAに借りに行った。
タクシー会社に電話してその運転手さんに来てもらった。

ワルイね、ちょっと茅ヶ崎駅北口まで行ってくれよ。
ハイどうも、どうしたんですこの時間にTSUTAYAなんて。
ずっとむかしに見たドキュメンタリー映画が再プリントされて出たんだよ。一枚しか置いていない、この間行った時に貸出中だったんだ、返ってきたら電話をくれと頼んでいたら、さっき電話があったんだ。別に今日じゃなくてもいいんだが、また誰かが借りて行ったらと思うとやっぱり借りておこうと思ったんだ。
 へえ〜。

なんていう映画なんですか、それは「不良少年」かつて良質なドキュメンタリー映画を作っていた岩波映画出身の「羽仁進」の監督作品だ。
この映画は上映された年、No.1に選ばれた。黒澤明らの作品を押しのけて。
 神奈川県にある久里浜特別少年院に初めてカメラを入れた画期的ドキュメンタリーの作品だった。今から半世紀以上も前のモノクロ作品だ。
一人以外はほとんど実際の少年院の収容生と収容経験者を起用している。

私が156才だった頃に見た。新東宝の映画であった。
まさかまた見れるとは思っていなかった。なんと撮影は金宇満司さん(ずっと石原裕次郎さんの作品を撮影した人)なんと音楽が武満徹さんだった。
借りて来てすぐに見た(89分)。すばらしい、やはり最高の作品だ。
作り手たちの若い感性がほとばしっていた。

で、タクシーの運転手さんが、今日は酷い目にあいましたよ、なんで、とんでもない阪神ファンのお客さんが乗って来たんですよ、そんなこと知らないから、オリックスの金子は巨人に入るんじゃないですかね〜とか、阪神は今日サヨナラ敗け、もうだめですねぇやっぱり阪神は、本当は巨人が優勝だったんだから。
なんていってしまったら、ウルセイバカヤローオレは阪神ファンなんだっていって座席をボコボコ蹴られてしまって灰皿が壊されてしまったんですよ、余程交番に行こうと思ったのですが、野球の話をした自分も悪かったと思いやめました。
そりゃ怒るよ、ダメだよサヨナラ敗けした後なんだから。

と、こんな会話を行きと帰り(借りてくるまで待ってもらっていた)にした。
そして運転手さんとサヨナラした。ハリとお灸の達人が先日、やはりドキュメンタリー映画のNo.1になった原一男監督の「ゆきゆきて神軍」を持って来てくれた。
この映画は気の弱い人にはすすめられない。かなりドキュメンタリーな深夜であった。

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