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2015年11月13日金曜日

「百貨店大嫌い」



私は二十歳から百貨店の仕事に関わってきた。
その時から私は百貨店はいずれ五〇貨店、三〇貨店みたいにならないと生き残れないと言ってきた。

主に呉服店から始まった百貨店では外商を除いて(一)高級呉服+和装小物、(二)高級家具+寝装寝具、(三)高級紳士服・高級婦人婦、(四)高級貴金属、(五)ベビー服・子供服・おもちゃ、(六)紳士靴・婦人靴、(七)皮革製品、(八)化粧品、(九)地下食品売場、こんな順が出世コースであった。

上司は部下に君ねえ、こんなに成績上げないと地下室行きだよ(地下食品売場)白菜とかタクアン売り場にするぞなどと叱責した。またミスばかりしていると催し場(バーゲン売り場)やデポに飛ばすぞと脅した(デポとは荷物の集荷発送所)。
百貨店=デパートメントには何でもあることが求められていた。
各メーカーから大量のマネキンという出向の人が来ていた(いわば人質である)。
私はそんな百貨店を観ていてその終わりを感じていた。

現在どうだろうか、高級呉服、高級家具、高級寝具、高級仕立服・婦人服などオーダーメイドは姿を消した。あっても目立つことはない。
いわゆる吊るしという出来上がり服(イージーオーダー)だ。
百貨店はブランド品を取り揃えるテナントショップになっている。
パルコがその先駆けである。先見の明はパルコにあった。

今、出世コースは稼ぎ頭の地下食品売場であり、高級時計や貴金属や美術品(主に外商が取り扱う)であり、化粧品やアクセサリー、ブランドを取り扱う婦人服、婦人靴、バッグ類など一階フロア商品担当などが出世コースであるはずだ。

ネット社会、特にeコマースが劇的に流通業界を変えてしまった。
百貨店が百貨店である必要性がなくなった。
ネット上では千貨店、万貨店のように世界中のあらゆる商品が検索され、すばやく手に入れることができる。

1111日中国では独身の日(一人ぼっちの日)自分へのご褒美にeコマースで爆買いする。アリババは値引きを仕掛け一日でなんと18千億を売り上げた。
中国人、台湾人、インドネシア人、タイ人、ベトナム人、中でも中国人の爆買いがなければ東京の百貨店の全部が大ダメージを受けるだろう。

地下食品酒類売り場だけが爆買いに頼っていない。
君ね、全然やる気ないじゃないか、しっかりしろい、そうでないと呉服売り場か家具売り場行きだぞとなる。百貨店は売り場面積で売上目標が決められる。
売り場と売り場は戦いをさせられる。数字、数字でヘトヘトになるまで闘う。
分刻みで売上が管理される。文具や書籍売り場などの担当にされるとガックリとなる。
オムツ売り場に行かされると、オツムがいかれる。
一流品や高級品は各専門メーカーが一等地に次々と出店をする。
百貨店はそれら強敵とも戦わねばならない。
中国人はeコマースで年間50兆円以上も買っている。
すぐに100兆円に近づくだろう。

昨夜家に帰ると百貨店時代の友人から電話があった。30分近く長話をした。私もその友人も百貨店が大嫌いである。出入りの業者さんをここまでイジメるかという体質は変わっているはずはない。休憩室や社員食堂でのおぞましい女性たちの姿も。
そんな女性の姿を追う男たちの目も。まるでデタラメな値段設定も。
そして見るも無残残酷な出世争いも。

10時オープン、いらっしゃいませと深々と頭を下げている姿を見ると、私はいつもプッと笑ってしまうのだ。
但し何人かはこれぞプロフェッショナルという人がいることを付け加える。

昨日の日経新聞朝刊で、三越伊勢丹HD社長大西洋氏は百貨店頼みからの脱却。
今後はデジタル戦略なくして生きていけないと危機感を語っていた。
海外を見つめる視野の広い人材が何より大事だと。

正解です、ずーっと続けて来たビジネスモデルは最早後退はあっても前進はしないのです。ちなみにアリババが何故強いかというと「雑談力」、eコマース上のお客さんは話をしたがるとか、それに対応出来ないと売りに結びつかない。
1111日、本日のeコマースが売り上げたのは168億円であった。

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