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2015年11月5日木曜日

「開き物」



1960年は安保闘争で国会議事堂周辺はデモ隊と警察が衝突し、樺美智子さんという学生が死んだ年だ。嵐のような安保闘争の中で法案成立、総理大臣岸信介は退陣した。
脱力感で無重力状態となった学生たちは西田佐知子の唄う「アカシアの雨がやむとき」の中に敗北を重ね合わせた。
♪〜アカシアの雨にうたれて このまま死んでしまいたい 夜が明ける 日がのぼる 朝の光のその中で 冷たくなった私を見つけて あのひとは 涙を流して くれるでしょうか。

つまり闘争の死を重ね合わせた。

そこにダミ声の総理大臣池田勇人が登場した。所得倍増計画をひっさげて。
“貧乏人は麦を食え”なんて言葉を放った。また“私は嘘は申しません”なんどと真顔でいった。“みなさん働きましょう”となった。
働くというのは傍(はた)のこと、隣の人のこと。
働いて傍の人と共に楽になりましょう。

以来日本人は働いて、働いて、働きまくった。
そして10年間でGNP4倍となった。所得は倍増した。世界の奇跡といわれた。
所得は増えたが失うものも多かった。
(一)人間性を失った。
(二)隣人愛を失った。
(三)情緒的感性を失った。
(四)故里の美しさを失った。
この四つを失ったことにより現代社会の原型が生まれた。
さらに一つ加えると敬老の精神を失った。

「下流老人」などという本が今ベストセラーになっている。
アカシアの雨にうたれて老人が死んでいても、涙をながす者はいない。
一日一個のカップ麺と二個のおにぎりだけで生きている老人の姿を見ると、我と我が身の罰当たりな姿に暗然とする。

サンマの開きとカキフライ二個、ポテトコロッケ一個と、とんかつ三切れ、ネギとお豆腐の味噌汁にごはん1.5杯。
113日文化の日の夕食であったが、老人と比べるとかなり贅沢といえる。
「あなたは何を食べているか教えて下さい。それを知ればあなたが分かるから」そんなことをいったフランスの美食家がいた。

一日の食費200300円で生きる老人の食べているものを知ったら、何を知り何が分かったかだろうか。私は何を食べたらいいのでしょう。私もそれなりに働いて来た。
食べたい物が食べたくて。あっ忘れていた。113日小アジの南蛮漬けを6匹食べた。

シワシワの手でおにぎりを食べようとする老人。家族はいない。
手を差し出す人もいない。私の食欲は果てしない。湘南フィッシュセンターで買って来た一枚なんと490円のアジの開きに思いを馳せている。
納豆に海苔、アサリの味噌汁があれば十分だ。ハムエッグがあればいうことなし。
エボダイやカマスの開き、ホッケの開きも売っていた。

私は開き物が大好物なのを公開する。
否、贅沢なことを後悔する。
2015年一億総掛りで活躍→働かなければならないのか。

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