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2019年11月26日火曜日

「あるウルサイ男、そして今直子先生」

去る日曜日、荻窪である人と打ち合わせをしたあとのこと。年齢は48歳ぐらい、体重は85kgぐらい、スーツは上下で28000円ぐらい、Yシャツは1800円ぐらい、腕時計は分からない。ノーネクタイ、仕事は多分会社員、きっと堅気である。きっと何かスポーツをしていた。例えば円盤投げとか、槍投げとか。一人哲学的に投げることの意味を追い続け、孤独を愛するような顔立ちだ。色浅黒く、鼻筋は高く、口びるは形よい。画材店に行くとデッサン用に置いてある、男の胸像のようである(アグリッパとか)。午後1時40分頃、スポーツジムか何かで鍛えて来たあとのように、顔が少し汗ばんでいる。ラガーマンかも知れない。ひょっとしてゲイかも知れない。男はチャーシュウワンタンメン、メンマ、煮玉子をオーダーした。私はチャーシュウメンだった。場所は有名な荻窪のラーメン店「春木屋」だ。私が行くと11人並んでいた。男は私の二人前だった。別に男に興味があるわけではない。彫刻のような顔と体つきに興味があった。物静かで知的であった。オーダーしたものが来るまでは、ハイ! チャーシュウワンタンメン、メンマと、煮玉子(小さな入れ物に入っている)。ここまではgoodだが、いきなりダメ男になった。まずすすったのだが、その音がズルズルとウルサイ、スープをレンゲですするのだが、このビッチが早くてピチャピチャ、ウルサイ、レンゲにワンタンをのせて口に入れるのだが、フーフーフーとしたあと強烈に飲み込むのだが、その音がトッテモウルサイ。何日間、何も食べていなかったように。ガツガツと早い。つまり早い、ウルサイ。スープをレンゲじゃめんどくさいと、残り半分ぐらいはラーメンの入った入れ物を手に口に入れる。その音がまた大きい。何だいこいつ、見た目と全然違うじゃないの、全然哲学的でもないし、孤独的でもない。メンマを一つひとつ箸でつまむ仕草がセコイ。四つか五つまとめて食べろと言いたい。ラストスパートはメンとワンタンとメンマを一気に飲み込んだ。そして煮玉子をスポッと口にして、ノドにつかえたのかシャックリみたいのを二度、三度して水で流し込んだ。春木屋にはかなり通っているようだ。そうか並んでいるお客さんのために少しでも早く食べてあげようと思ったのかも知れない。が、わざわざ聞くこともできない。あんまりイメージと違ったので、気になって仕方なかった。せっかくの春木屋の味を十分に味わえなかった気がする。それにしても圧倒的にウルサイラーメンの食べ方だった。並んでいたお客さんにとっては、いい人なのだった。やっぱり春木屋は旨い! 年末にもう一度行く。今日は銀座名物奥野ビル内で開催中の「今道子」さんの写真展に行く(巷房3階と地下)。この人の写真を見るとしばらく魚の光り物、アジ、イワシ、コハダ、サバ、サンマ、サヨリなどが遠ざかる。他にタコとかイカとかも使用する。被写体のすべてに魚類が使われる。木村伊兵衛賞はじめ日本の主要な賞を何度も受賞している。全身いつも黒ずくめ。世界的にも有名である。一度制作現場を撮影させてくださいと言ったら、見ないほうがいいですと言われた。鎌倉に住む大巨匠だ。お寿しと言えば光り物、お寿し好きの人はぜひ観てほしい。その写真を観ればもっとお寿し好きになるはずだ。私は日本の女流作家のNo.1だと思っている。四谷シモンさん+渋澤瀧子さん+人形+鹿男。かなりの不気味さだ。
※11月30日まで日曜は休廊
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