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2019年11月8日金曜日

「夢追い人たらん」

「蟻の一穴」とはよく言ったものである。今年の台風と豪雨、そして洪水はまさに蟻の一穴から増水し大河も小川も氾濫することを、まざまざと見せた。人間関係も、夫婦関係も、親子関係も、友人関係も同じだ。たった一つの目つき、たった一言、ちょっとした仕草、一本の電話、一枚の葉書や一通の手紙で破壊は始まる。人間と人間の関係は脆いものである。自分の目先きのことばかりを考えている時代にとって極めて顕著だ(反省)。近親憎悪というが、近親であればあるほどその結果は醜い。兄が弟に対してあいつは能力がないくせに、勘違いしていると言えば、弟は兄貴はタニマチ気分で終わった人間たちを引き連れていい気になっている。兄貴はコンプレックスの塊だと。不倫をしていない夫に、あなたはウソつきと言ってヤケ酒を飲む、不安神経症の妻。なんでこんな簡単な問題が解けないの、と言ってヒステリーを起こす母親、そんな母親をいい加減にしろと叩く父親。どうしても10万円貸してほしいいんだという学生時代からの親友に、借用書を書いてくれよと言う友。失敗を叱咤されたときにした憎悪の目つき。すがる気持ちで電話をして来ているのに、つれなく応対した電話。もう二度とメールや電話をしないでねと書いた葉書。人の気持ちも知らないで、自分の近況ばかり、自分の成果ばかり長々と書いた手紙。無防備にも不快を表わし、電話をしないでと、人の好意を知らない話。何年、何十年の付き合いも、ジ・エンドとなる。蟻の一穴の代償は時に悲しく、時に悔しく、そして時に残酷なこととなる。私は若かりし頃、話している相手の男が、ゴミ入れに足をのせ靴下のズレを直しているのを見て、激怒したことがある。10年早いと。相手の男はキョトンとして、そして平謝りした。それ以来その男との付き合いは終わった。そのまま付き合っていたら、きっと☓☓☓☓にしていただろう。1日24時間が無駄に使えない歳になってきているので、大切な人間と会うことを心掛けている。今年は大切な人を亡くした。思いもよらぬ人と再会をした。穴ぼこが空いていた人間と元に戻った。ステキな人、すばらしい人との出会いも多かった。その中に、金モウケの話をする人は、一人もいない。みんな夢追い人だ。左官職人、映画、小説、画家、文学評論、歌、建築、大工、陶芸、スポーツ、舞台、オペラ歌手、鮨職人、チェロリスト、ワイナリーオーナー、ジャム、甘酒、焼菓子製産者&オーナー、レストラン&ウェディング、レストランエネコ東京の社長には感動した。みんな目がキラキラと輝いていた。うらやましいほどに。今、あっとオドロクような仕掛けをいろいろ思案している。たとえ夢で終ってもいい。


レストランエネコ東京の店内



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