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2009年12月21日月曜日

人間市場 アタリメ市篇

烏賊がスルメになってアタリメになる。

一杯の烏賊の人生も千変万化である。烏賊のままで魚屋に出ると、旨そうだな煮て食べるか。

お、烏賊のソーメンもある、ビールのつまみに絶好だな。そうだ、子供は烏賊リング揚げが大好きだったな。フライよし縁日の丸焼き最高。家じゃちょっとイマイチだな。あれはやっぱり寒川さんとか、海の家とか江の島で食べるから旨いんだな。イエス イット イズだ。新島のアカ烏賊なんか泣けるほど旨いな。知人から頂いたがああいうのには一切手を加えちゃ無礼なんだな。生身のまま頂く、これが礼儀だ。烏賊もイカした事やるじゃない。頭に来たら真っ黒い墨ぶっかけるなんて。駄洒落てる場合じゃない。


隅に置けないといったらスルメになった頃からか。平べったい板みたいになり、白い粉をふいて化粧したあたりから何故か夜の町でアタリメになって、それに何故かマヨネーズがつく(小皿に唐辛子)。おでんにカラシ、板わさにワサビ、カレーライスに赤い福神漬け、オムライスにケチャップ。いわば法律に近い関係になっている。

七輪に品川練炭を入れ、その上に網をのせてスルメを焼く。アチチ、アチチとどんどん丸くなっていく。まあ火あぶりの拷問に近い。これを又アッチチと言いながら引き裂いて、醤油、マヨネーズと少しの唐辛子を付けて食べる。秋刀魚と同じくもうその焼いている時の香りといったら日本の香りである。大衆、一位の民の宝である。大邸宅から秋刀魚とかスルメの香りが流れているのを嗅いだ事はない。まあ、お金持ちだから何か特別な装置を付けて食べておるのでしょう。しかし家で食べている時はスルメであり安っぽいもんである。

ところがこれが銀座、赤坂、六本木の夜になると、平べったくなったスルメの様子が俄然変わる。

夜の世界では乾き物である。捕られた時は瑞々しくピチピチしていても乾き物である。どこか不貞腐れた感じもする。セットで出る店は仲間に塩豆かエンドウ豆、品川巻き、ピーナツがほぼ決まりである。このセットの値段もクラブやバーによってはしたたかである。クラブ活動に慣れてない人はお通しだと思う。つまりタダだと思う。世の中タダより高い物はない。後で伝票を見ると、おつまみとは絶対書いてない。セット5000円とか書いてある。正確には判らないが、ピーナツ25個、品川巻き17個位、スルメ(ここではまだスルメ)細切り20本位である。ここで怒っては夜の街に出る事は出来ない。何しろ1本千円くらいの「いいちこ」が7千5百円~1万2千円しちゃうんだから。え、ブスがいて、何も喋らないでこっちが一生懸命笑わせて何でだろう、何でだろだよ。こう言っていてはやはり夜の街ではイケマセン。新宿のボッタクリバーじゃないんです。一応銀座、赤坂、六本木。ちょっと足をのばして飯倉、西麻布、代官山。

伝票が出る、ドキッとする。しかし、間違っても伝票なんかじ~っと見ていたらおしまいです。いくらいいスーツを着てたって、その日の内に店中の女の子にサイテーな客ね、です。基本的に伝票は見ない、金額を聞く直ぐ払う。これが夜の鉄則。私は初めての店でもまずカードで支払う事も、現金で支払う事もありません。鉄則です、法律です、全てツケです、私の飲食歴の決まりです。むしろツケの方が必ず割高ですが、ガマ口出してお札を一枚財布から金を出して飲み屋で払った事は一度もありません。気合いです、その代わり直ぐ振り込みます。それじゃこれでよろしくと名刺を出す。

スルメも一品料理で注文するとアタリメに昇格です。一品となるとマヨネーズに七味唐辛子なんかがついてきます。堂々たる一品様です。アタリメよです。スルメがアタリメになった瞬間、プライスアップ、ど~んです。銀座のちょっとした店で8千円~1万5千円の値がつきます。マヨネーズと唐辛子の露払いと太刀持ちかなり値が張ります。大体アタリメは

1本食べるのに数分間はかかります。顎がかなり疲れます。いいとこ3~5本で終わりです。ちなみにスルメはスルから縁起が悪い。アタリメはアタリだから縁起がいい、そういう事です。夜の世界は中々に洒落ているのです。高い月謝を払って憶えたのです。

1 件のコメント:

sakon さんのコメント...

なるほど。それでアタリメですか。高い月謝での勉強。それを勉強させて頂いてます。ありがとうございます!