濱口祐自さん |
六月は一年の中間点だから「おへそ」の月といわれる。
月末三十日、赤道倶楽部という店で「濱口祐自」さんのライブを聴く。
和歌山県熊野・勝浦に潜んでいたという奇跡のブルースギタリストである。
デルタ・ブルースからサティ・エリントンそしてライ・クーダー。
極めつけは泣けてくるくる。目はうるうるとする自身作詞作曲の弾き語り。
80年代遠洋マグロ漁船に乗りパプアニューギニアへ。
勝浦漁港の古い民家を、自らの手で切り出した竹を使ってクラブに改造、12年間経営と演奏生活。90年代、ヨーロッパ各地でストリート演奏の旅を続ける。
98年ソロギターアルバム「竹林パワーdream」を発表。
2001年東京青山での全国フィンガー・ピッキングギターコンテストで投票一位のオーディエンス賞獲得。2013年久保田麻琴プロデュースでアルバム制作。
渋谷のライブハウス、SARAVAH東京で記録的な観客動員を果たす。
東海大学体育学科出身の59歳。
小さく、細い体にパナマ帽とアロハシャツ。チノパンに裸足、すり減った運動靴。
だが目は鋭く、体から修羅場をくぐって来た男独特の殺気が漲っている。
二十人近くで満杯の店にはステキな男とステキな女性たち。
この店の主がひと声掛けて集まっていた。
私の右隣はミュージシャン、左隣りには某大学の心理学の女性教授とその友人三人であった。七時から九時半まで、二度のブレイクタイムをとって。
久々にブルース・ギターに酔った。
ライ・クーダーの映画、「パリ、テキサス」の主題曲は秀逸だった。
友人のノンフィクションライターが右隣に椅子を持って来たので久々に一緒に飲んだ。
いい気分を味わう事が出来た。
友人は私と同じ茅ヶ崎に住んでいるので一緒に東海道線に乗って帰宅した。
十二時少し過ぎ、一時からフランスとナイジェリア戦がある。
その前に朝日新聞の夕刊を広げた。いい気分が一気に不愉快に変わった。
衆参648人の所得公開ベスト10が載っていた。
第一位鳩山邦夫(自民)、所得なんと29億3757万円。
第二位が1億3429万円だからいかにダントツか分かる。ほとんどは遺産相続らしい。
何故ならこの政治家が何か生産したという話は聞いた事がない。
その存在だけで悪の権化の様な政治家だ。
世界中の蝶々を採集して来て、夜な夜な注射針を刺し、標本が趣味とか。
何をやったかといえば法務大臣の時に、死刑囚を13人あの世に送った事だ。
当然ダントツ第一位である。生き物を殺すのが好きな様だ。
あっちこっちの政党を渡り歩き、結局土下座みたいな形で自民党に復党させてもらった。今やいるかいないか分からない羽を失った、蝶々みたいな政治家だ。
こんな人物が東京大学を主席で出たなんて悪夢の様な話だ。
地獄では首を吊られた13人が必ず復讐すると誓い合っているとか(?)
あーマッタク嫌な記事だぜと思っていると、もう一つ不愉快なものに出会った。
それは新潮社の広告「かもめのジョナサン/完成版/リチャード・バック著/五木寛之(創訳)」全二段の広告に、年老いた五木寛之の顔がドーンとあった。
小説を書かなくなってしまった、元小説家、現エッセイスト、雑文家、講演稼業人だ。
その昔ある仕事を依頼しに芝のプリンスホテルへ行った時、六時間以上も待たされた。
小説より金儲けの方がはるかに上手い。
人の心の悩みを、手を変え品を変え、出版社を変えては商売する。
二年間位学んだ仏教学を種に売るのだ。法然、蓮如、親鸞を、足したり、引いたり、掛けたりしながら商品化する。この人は出版プロデューサーとしては一流であるといえる。
そして今、あの「かもめのジョナサン」と来た。この世とお別れ前のひと稼ぎ。
だが悩み深き現代人はこぞってこの本を買い求めるだろう。
あー嫌だ、嫌だ。「やもめのジョナサン」なんていう言葉がまた流行るのだろう。
(敬称略)
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