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2014年7月29日火曜日

「二人のカレー」




猛暑、炎暑、酷暑、外の温度は33度、こんな日にカレーうどんをすする人は相当なカレーうどん通だ。真夏のカレーうどんはすするほどに汗が湧き出て来る。

一本一本の毛穴という毛穴から汗がフツフツ出てやがてポツンポツン、そしてポタンポタンとしたたり落ちる。
白いよだれかけみたいな紙に落ち、それから外れたのはズボンやスカートに落ちる。
シャツやブラスの背中は汗で素肌が滲み出る。
ついでに化粧も土壁が崩れるように落ち、すするほどに顔が変わる。
目は赤く充血し、口唇が厚くなる。

七月二十八日午後二時二十分〇八秒、壁時計を見た。
三十五前後の女性が、私の横の横でカレーうどんをすすっていた。
近所に保育園があるので二人はお迎えに来ていたのかもしれない。
「熱いけどさぁー、夏のカレーうどんって汗がバンバン出るからストレス解消になるわよね、ねね、あなたもっともっと唐辛子かけたほうがもっと汗が出るわよ」と、どことなく憎しみをというか、嫌味をこめて唐辛子をかけてあげる、カライ、カライワとカラムーチョのヒーヒーおばさんみたいな声を出し、コップの水をゴクッゴクッと飲む。

「ダメよ、途中で水なんか飲んだら、最後の最後に水を飲むのよ」なんだいこの二人、仲のいい奥さん同士かと思ったら大違いみたいだ。
「すいません、ライス下さい」と唐辛子をかける女性が言った。
かけられた女性は私は結構よと言った。二人共顔面汗びっしょりであった。
夏のカレーうどんはイジメの道具に使われる事もある。

私はスポーツ新聞を読んでいた。
石川県の星陵高校が08で負けていたのだが、九回裏に大逆転をして甲子園出場となった。決勝でなければ7回コールドゲームだった。勝負は諦めたら敗けだ。

ギャー、アツー、アヂィー、ギャー何すんの!カレーうどんの入れ物をひっくり返して、唐辛子を入れた女にかけたらどんなに面白いだろうかと思いつつ、私はざるそば代を払って店を出た。

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