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2014年7月18日金曜日

「ブルースな夜」




夜の銀座を歩くのが好きだ。
水原弘の「黒い落葉」などを口ずさみながら五丁目から新橋駅まで歩いた。
♪〜俺にも若さがあったのさ 落ち葉の唄はブルース。

銀座にはブルースがよく似合う。昇って行く人間には興味はない。
落ちて行く男、落ちて行く女。
沈んで消えて行く宿命。見栄と虚飾。意地とプライド。天と地。

落葉のブルースは酒と涙の上に積み上って行く。
♪〜咲いて流れて散って行く、今じゃ私は涙の花よ…。
♪〜京都にいる時や忍と呼ばれたの…流れ女の最後の止まり木にあなたが止まってくれるの待つわ、昔の名前で出ています。

森進一や小林旭の歌を口ずさむ。歌詞が途切れ途切れしか浮かばない。
人に尽くして沈んだ男は銀座では最高の男とされる。
人を利用し裏切って昇った男は、その逆に最低となる。

十代の頃、どっぷりと夜の世界にいた。酒が学校だった。
あの人、あの男、あの女性は今どうしているだろうか。
飲み代を背負い込ませたまま別れた顔を思い出す。あったら何倍にもして返したい。

銀座にやたらと“俺の”がついた店が増えた。
俺のイタリアン、俺のフレンチ、俺のカレー、俺の焼肉。何だこりゃと思う。
さすがに俺のオンナはない。少年たちが万引きした本を、安い値段でソックリ買い上げて高い値段で売り、町の本屋さんの敵となったブックオフの創業者が“俺の”ブームを生んだ。

その内、あたしのイタリアンとか、わたしのフレンチとか、あたいのカレーなんかが生まれるかもしれない。男と女はいつの世も争うのだ。
結局男は勝つことは出来ない。あたしは俺よりも常に強い。

やがて私は新橋駅に着いた。
「ママよ、ゴハン食べた、学校の用意ちゃんとしたのぉ、これから電車乗るからね〜」
携帯を手に小走りに改札口に向かう、夜の女性たちが続々と列を成す。
私はそんな女性がとても愛しく思えるのだ。

がんばれよ、きっといい事があるからなと、こころの中で声をかけるのだ。
会社員風の若い女性がへべれけになって同僚らしき二人の男に抱き抱えられている。
七月十七日木曜日、午後十一時四十八分三秒。

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